日本の民間企業から国連に転職して大きく変化したことの一つは女性率の高さだ。
あえていうまでもないことだが、日本はジェンダー後進国だ。昨年更新されたWEFジェンダー平等ランキングでも日本は(安定の)117位(過去最低を更新)。それでも、いまの日本の途上国開発の戦略的重点分野の一つはジェンダーだというのだから、やや驚いてしまうのだが(10位以内にがっつり食い込むフィリピンやルワンダにはむしろ習うべきところの方が多い気がする)、これについてはここではひとまず置いておくとする。
とにかく女性が多い。
国連全体だと38%。うちの機関についていえば47%程度いる。
そして特にこれは先進国×本部ということも影響しているだろうが、上から下までどの職階をみてもきちんと女性がいる。
むしろ管理職にこそ女性が多い印象さえうけるといってもいい。
現に4つある局のうち2つの局は女性局長、副事務総長(No.2)、統括室長(No.3)も女性、うちの局では、5つの部のうち3つの部も部長は女性。おそらく部長レベルでみるとうちの局にかぎらず、本部では過半数が女性だと思われる。
対照的に、日本で勤めていた民間企業では、自分と同じ年代(ざっくり言うと2008年入社以降)は女性率3割(30人中10人、絶対数としては決して多くない)、これでも少ないが、上に上がれば上がるほど、女性は少なくなり(採用人数×昇進率)、基本的に「上司」と呼ばれるような役職に女性はほとんどいなかった。700名いる会社全体の中で、片手に収まるほど。
顧客でも状況はほぼ変わらず、会議で私が女性1人なのはデフォルトで、驚くことではなかった。「文化遺産」なんていう、いかにも女性が多そうなテーマで20以上の自治体(県、市町村)が集まる80-90人ほどの会議で、外から参加してる私と同僚以外には女性担当者が2人ほどしかいなくて、見渡す限りのグレーと黒のスーツの波に呆気にとられたこともある。
そんな具合なので、私が下っ端としてちょこちょこでて行く会議でも、8割が女性になり、「あら、今日はGender parityが崩れちゃったわね、クフフフフ(笑)」なんてひと笑いが起こるいまの職場は未だに私の中では新鮮だ。
うちのオフィスは一人オフィスを持っている管理職以外は、4-5人入る大部屋がそれぞれのフロアにいくつかあり、それをシェアしてつかっている。
私が割り当てられた大部屋はなんと全員が女性で、その雰囲気さながら私は、この部屋を勝手に「かしまし部屋」と呼んでいる。
かしまし部屋にいる女性は、私を含めて5人。
私ともう二人の若手はほぼ同い年だ。
一人はファッションにぬかりがなく、オフィスでは常に弾丸トークで電話をかけまくってる、デキ女のおしゃれっ子。
もう一人は童顔で、いつもニコニコ笑顔が柔らかいのに、実は鉄人レース*を年数本走るというものすごいストイックなアスリート
(*Iron man race - 水泳3.8km、自転車180km、マラソン42.195kmを一度にやってその総合タイムを競うレース。ちなみにトライアスロンは水泳1.5km、自転車40km、マラソン10km。アイアンマンはマラソン部分だけでフルマラソンの距離がある。はっきり言ってネジが外れてる)
残りの二人はアラフォーの中堅女性で、
一人は、ガハガハ笑いながら、子どもの保育園の迎えの時間に間に合うように、
ブルドーザーのごとく仕事をなぎ倒すようにしていく文字通り肝っ玉母ちゃん。
最後の一人は超が付くほど几帳面で「あー、あの人アメリカ人ぽいわよね」と自分もアメリカ人なのに、言っちゃうような生真面目先輩
そんなかしまし部屋の毎日はびっくりするほど前職のオフィスと違う。
真夏、冷房のないうちのオフィスで、室内はヨーロッパといえども西日で温室のようになる。
すると、肝っ玉母ちゃんがガバッと立ち上がったかと思うと、バタバタとどこかに消えていった。
ほどなくして戻ってきたかと思うと、手には5本のアイス
「はーーーい、もう暑いし金曜だし、みんな今からアイスタイムーーーー!」
部屋の残りの面々も、テンションは爆上がり。
「いぇーい!アイスーーー!」
「はい、午後もがんばりまーす」
また、別の日、
きまじめ先輩がなにやら、ジーーーーーっと窓の外をみている。
気づいた童顔アスリートちゃんが、「どしたの、なにか気になるの?」と話しかける。
すると彼女は視線を窓の外から一切そらさずいう、
「あのね、この外、今月から工事はじまったでしょ?」
「私たちのオフィスの目の前に彼らの控室のプレハブがあるのよね」
「うんうん、それがどうしたの?」
「私昨日気づいちゃったの、14時半くらいに彼ら着替えタイムはじまるの」
(ここで部屋一同仕事の手をとめ、聞き耳をたてる)
「いやぁ、土建やさんていい身体してるのよねー」
全員一斉彼女方をふりむく、
「やばーーーー。それ覗いてたの?エロー」
「いやいや、覗いてないし。勝手に着替えてるから窓の外みてただけ」
「早く教えてよ。独り占めとかずるいでしょ」
「わたしたちも眼福ひつよーーーう」
「ちょっと、今日の着替えはじまったら教えてね」
「了解。ちゃんと見逃さないようにするわ」
なにが面白いって、このメンバーの中でよりにもよって、
生真面目先輩がこれを言い出したことに全員が、笑いと驚きを隠せない。
この日、全員でかけよって窓の外を観察したのはいうまでもなし
このノリ、どこか懐かしいとずっとおもっていたのだが、
このあたりで確信した。
そう、これは15年前まで私がいた女子高のノリなのである。
一度思い立つと、もうそれ以外に形容しようがないくらいに、しっくりきた。
男女比が半々になった国際機関においては、
もはや一周まわって女子高ノリが存在する。
高校は共学、大学・大学院はもはや男子校のようなジェンダー比にいたため、私自身がこのノリを久しくわすれたいた。
代わって今度は私たちが、マジョリティーとしてハラスメントやPCに気を付けなければならないのだけど、逆の極から、大きく振れてきた私にとっては
いま、まだかしまし部屋のノリが新鮮で清々しい。
この部屋の女子高ノリを知っていて、かしまし部屋にはよく他の女性社員もたちよっていく。
今日のお弁当のレシピから、パートナーとの悩み、生理痛がヤバいはなしから、
Tinderであった男が100年の恋も一瞬で覚めるほどやばい奴だったこと、
Black Fridayのセールの戦利品はなんだったか、などに話を咲かせ、
全員がコーヒーとチョコ過多な部屋で、
2人・3人でコーヒー・チョコ断ちチャレンジ週間などの企画をたててみたりする。
私が、「中高生だから」していたと思っていた話題や、
「公共ではしない(友達と少人数でしかしない)」と思っていた話題がかしまし部屋にはある。
子供の夜泣き具合で朝のおしゃれへのやる気が変わる肝っ玉母ちゃんが紅いリップを引いて来ているのをみて、「今日はゆっくり準備できたんだな」と安心したり、
おしゃれデキ女にデスク小物を褒められてちょっと気をよくしたり、
ポーカーフェイスの生真面目先輩が、実はMUJIの筆箱にサンリオのシールを貼りまくってるのをみて、ちょっとクスってなったり、
童顔アスリートと、おすすめのドラマや映画のリンクを仕事メールで送りあってお昼ぺちゃくちゃする毎日は、
どんなに仕事が単調だったり、トラブル続きでも、それだけで少しだけ楽しい。
勉強や授業がどうであろうが、とにかく学校にいくのが楽しかった頃に、ほんのすこしだけ似ている。
あえていうまでもないことだが、日本はジェンダー後進国だ。昨年更新されたWEFジェンダー平等ランキングでも日本は(安定の)117位(過去最低を更新)。それでも、いまの日本の途上国開発の戦略的重点分野の一つはジェンダーだというのだから、やや驚いてしまうのだが(10位以内にがっつり食い込むフィリピンやルワンダにはむしろ習うべきところの方が多い気がする)、これについてはここではひとまず置いておくとする。
とにかく女性が多い。
国連全体だと38%。うちの機関についていえば47%程度いる。
そして特にこれは先進国×本部ということも影響しているだろうが、上から下までどの職階をみてもきちんと女性がいる。
むしろ管理職にこそ女性が多い印象さえうけるといってもいい。
現に4つある局のうち2つの局は女性局長、副事務総長(No.2)、統括室長(No.3)も女性、うちの局では、5つの部のうち3つの部も部長は女性。おそらく部長レベルでみるとうちの局にかぎらず、本部では過半数が女性だと思われる。
対照的に、日本で勤めていた民間企業では、自分と同じ年代(ざっくり言うと2008年入社以降)は女性率3割(30人中10人、絶対数としては決して多くない)、これでも少ないが、上に上がれば上がるほど、女性は少なくなり(採用人数×昇進率)、基本的に「上司」と呼ばれるような役職に女性はほとんどいなかった。700名いる会社全体の中で、片手に収まるほど。
顧客でも状況はほぼ変わらず、会議で私が女性1人なのはデフォルトで、驚くことではなかった。「文化遺産」なんていう、いかにも女性が多そうなテーマで20以上の自治体(県、市町村)が集まる80-90人ほどの会議で、外から参加してる私と同僚以外には女性担当者が2人ほどしかいなくて、見渡す限りのグレーと黒のスーツの波に呆気にとられたこともある。
そんな具合なので、私が下っ端としてちょこちょこでて行く会議でも、8割が女性になり、「あら、今日はGender parityが崩れちゃったわね、クフフフフ(笑)」なんてひと笑いが起こるいまの職場は未だに私の中では新鮮だ。
うちのオフィスは一人オフィスを持っている管理職以外は、4-5人入る大部屋がそれぞれのフロアにいくつかあり、それをシェアしてつかっている。
私が割り当てられた大部屋はなんと全員が女性で、その雰囲気さながら私は、この部屋を勝手に「かしまし部屋」と呼んでいる。
かしまし部屋にいる女性は、私を含めて5人。
私ともう二人の若手はほぼ同い年だ。
一人はファッションにぬかりがなく、オフィスでは常に弾丸トークで電話をかけまくってる、デキ女のおしゃれっ子。
もう一人は童顔で、いつもニコニコ笑顔が柔らかいのに、実は鉄人レース*を年数本走るというものすごいストイックなアスリート
(*Iron man race - 水泳3.8km、自転車180km、マラソン42.195kmを一度にやってその総合タイムを競うレース。ちなみにトライアスロンは水泳1.5km、自転車40km、マラソン10km。アイアンマンはマラソン部分だけでフルマラソンの距離がある。はっきり言ってネジが外れてる)
残りの二人はアラフォーの中堅女性で、
一人は、ガハガハ笑いながら、子どもの保育園の迎えの時間に間に合うように、
ブルドーザーのごとく仕事をなぎ倒すようにしていく文字通り肝っ玉母ちゃん。
最後の一人は超が付くほど几帳面で「あー、あの人アメリカ人ぽいわよね」と自分もアメリカ人なのに、言っちゃうような生真面目先輩
そんなかしまし部屋の毎日はびっくりするほど前職のオフィスと違う。
真夏、冷房のないうちのオフィスで、室内はヨーロッパといえども西日で温室のようになる。
すると、肝っ玉母ちゃんがガバッと立ち上がったかと思うと、バタバタとどこかに消えていった。
ほどなくして戻ってきたかと思うと、手には5本のアイス
「はーーーい、もう暑いし金曜だし、みんな今からアイスタイムーーーー!」
部屋の残りの面々も、テンションは爆上がり。
「いぇーい!アイスーーー!」
「はい、午後もがんばりまーす」
また、別の日、
きまじめ先輩がなにやら、ジーーーーーっと窓の外をみている。
気づいた童顔アスリートちゃんが、「どしたの、なにか気になるの?」と話しかける。
すると彼女は視線を窓の外から一切そらさずいう、
「あのね、この外、今月から工事はじまったでしょ?」
「私たちのオフィスの目の前に彼らの控室のプレハブがあるのよね」
「うんうん、それがどうしたの?」
「私昨日気づいちゃったの、14時半くらいに彼ら着替えタイムはじまるの」
(ここで部屋一同仕事の手をとめ、聞き耳をたてる)
「いやぁ、土建やさんていい身体してるのよねー」
全員一斉彼女方をふりむく、
「やばーーーー。それ覗いてたの?エロー」
「いやいや、覗いてないし。勝手に着替えてるから窓の外みてただけ」
「早く教えてよ。独り占めとかずるいでしょ」
「わたしたちも眼福ひつよーーーう」
「ちょっと、今日の着替えはじまったら教えてね」
「了解。ちゃんと見逃さないようにするわ」
なにが面白いって、このメンバーの中でよりにもよって、
生真面目先輩がこれを言い出したことに全員が、笑いと驚きを隠せない。
この日、全員でかけよって窓の外を観察したのはいうまでもなし
このノリ、どこか懐かしいとずっとおもっていたのだが、
このあたりで確信した。
そう、これは15年前まで私がいた女子高のノリなのである。
一度思い立つと、もうそれ以外に形容しようがないくらいに、しっくりきた。
男女比が半々になった国際機関においては、
もはや一周まわって女子高ノリが存在する。
高校は共学、大学・大学院はもはや男子校のようなジェンダー比にいたため、私自身がこのノリを久しくわすれたいた。
代わって今度は私たちが、マジョリティーとしてハラスメントやPCに気を付けなければならないのだけど、逆の極から、大きく振れてきた私にとっては
いま、まだかしまし部屋のノリが新鮮で清々しい。
この部屋の女子高ノリを知っていて、かしまし部屋にはよく他の女性社員もたちよっていく。
今日のお弁当のレシピから、パートナーとの悩み、生理痛がヤバいはなしから、
Tinderであった男が100年の恋も一瞬で覚めるほどやばい奴だったこと、
Black Fridayのセールの戦利品はなんだったか、などに話を咲かせ、
全員がコーヒーとチョコ過多な部屋で、
2人・3人でコーヒー・チョコ断ちチャレンジ週間などの企画をたててみたりする。
私が、「中高生だから」していたと思っていた話題や、
「公共ではしない(友達と少人数でしかしない)」と思っていた話題がかしまし部屋にはある。
子供の夜泣き具合で朝のおしゃれへのやる気が変わる肝っ玉母ちゃんが紅いリップを引いて来ているのをみて、「今日はゆっくり準備できたんだな」と安心したり、
おしゃれデキ女にデスク小物を褒められてちょっと気をよくしたり、
ポーカーフェイスの生真面目先輩が、実はMUJIの筆箱にサンリオのシールを貼りまくってるのをみて、ちょっとクスってなったり、
童顔アスリートと、おすすめのドラマや映画のリンクを仕事メールで送りあってお昼ぺちゃくちゃする毎日は、
どんなに仕事が単調だったり、トラブル続きでも、それだけで少しだけ楽しい。
勉強や授業がどうであろうが、とにかく学校にいくのが楽しかった頃に、ほんのすこしだけ似ている。
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