2018年8月12日日曜日

冷静と情熱のあいだに、もしくはフロントオフィスとバックオフィスのあいだで

こちらではどんな仕事をしているの?とよく聞かれるようになりました。
圧倒的に現場重視で実行部隊ありきの組織の中で、本部にいる若手ペーペーの自分がどのような役割を担っているのか。それ自体を咀嚼して理解するの自体に時間と熟考を要しましたが、二カ月たった今ようやく頭と腹両方できちんと納得する形で理解が追いついて来た気がします。

私の仕事は民間企業に例えると、ちょうど経営企画や統括室に相当する、と表現するのが今のところ一番しっくり来ています。
経営企画といえば、まさに文字通り経営を企画するところなので、例えば中期計画など組織の戦略を組んだり、四半期ごとにその活動を分析したり、新規事業を立ち上げたり、といった仕事をしているような場所です。
そこをいわば組織のブレーンと呼ぶ会社もあるのではないかと思います。
さて、このように表現すると、花形というか、組織で重役を任されているような印象を与えますが、私がこれを持ち出したのはむしろ自分のabilitycapacityを示すためではなく、inabilityincapacityを説明するためです。

こちらに転職して仕事上、私が一番苦労したのは海外にきたから、ということや業種・業態が変わったということより、この組織での立ち位置の違いでした。
私は前職ではコンサルタントをしていたので、常に社外にいる別組織の顧客からプロジェクトベースで仕事をもらっていました。
この時、顧客はまず 1)問題意識や課題意識があります。
専門性の理由で組織内ではできない、または(こちらの方が圧倒的に多いですが)人手や時間の余裕的に社内でまかなえない仕事がアウトソースされてきます。問題意識がずれていて、それを一緒に後々軌道修正されることはありますが、問題意識はある。

なのでもちろん2)その作業の必要性も認識している。
社外の人にお金を出してでも頼みたいと思っているので、その量や質は都度すり合わせが必要ですが、少なくとも誰かにやってもらわなきゃいけない、と思っている。

そして、3)明確な成果物がある。
多くの顧客は私たちに払ったお金を正当化しなくてはならないし、ちゃんと元を取らなくては、とも思っているので、要求がふわふわしていることはありますが、成果物はあります。会議の企画や準備、商談、分析、レポートなど。

さて、仕事するときのこれら条件がこちらにきて大きく変わりました。

まず、経営企画とは、フロントオフィスとバックオフィスの間に位置する部署ということ。
むしろ、バックオフィス寄り。
だって、メーカーに例えれば、何か特定の商品を管轄しているわけではないし、生産管理をしているわけでもなければ、販売をしているわけでもない。つまり直接売上を持っている部署ではない。
これが全ての条件を変える。
バックオフィスなので、私の顧客は社内にいます。
私の同僚たちは加盟国や被援助国、裨益者に価値を届けているけれど、私の仕事の結果変わるのは概ね社内です。フロントオフィスがよりうまく活動できる環境と土壌を整えることが仕事。

しかもこの経営企画、いるのは局長と私だけ。
(私と彼女の職階には7つ開きがあるので、彼女が私の直接の指示系統であること自体めちゃくちゃイレギュラーなのだが)
中堅社員が頭を寄せ合っているのであれば、組織の戦略づくりとそれを実践に落としていくことが仕事になるのだろうけど、大大大ボスという責任者/意思決定者の元に新米の私一人がついているとなると、

1)必ずしも問題意識はないし、2)作業の必要性は認識されていないし、3)明確な成果物がない。なんて中で作業をすることになる。

例えば、私がこちらにきてした作業の一つが報告書のテンプレ作成(現在進行形)
私が配属されている事業部門(組織には2つの局がある。そのうちの一つ)では、例えば私の着任時、幹部クラスへの四半期報告のための共通テンプレートがなかった。それぞれ全く異なるスタイルと書き方で自由にまとめられた報告書を文字通り、そのままホッチキスで止めて、一つの事業報告かのように提出していた。(これ自体、日本のトップダウンの組織からすると驚きなのだが)
こうなると、局としての成果や活動が報告できないし、何より組織として統率取れてるのかな?なんて不安を与えたりする。
なので、私と局長のポジションからは至極当たり前の作業としてこのテンプレ改編の仕事が着手されたわけだけど、それぞれの部からすれば、「まずはやることをやることをやるのが大切でしょ?その結果を報告するにすぎないだけなのだから、そこに時間をかけるなんてよくわからない」なんて声はもちろんあるし、
それぞれの部で最適だと思った形式を元々選んでいるので、目的には賛成だけど、実際慣れたフォーマットを変えることには消極的だったりする。
加えて、ここが一番響くのだが、このテンプレを変えた結果のインパクトが非常に見えにくい。もしかしたらこの結果、予算が増えるかもしれないし、活動もしやすくなるかもしれないけど、それにテンプレがどれだけ寄与したかはわかりにくいし、すぐには結果が出ない。

この圧倒的違いが、日々の業務をする上では大きな変化だったので、かなり、いやかなり悩んだ。
まずは、私が仕事をするためのファーストステップは部署をぐるぐる散歩しながら、御用聞きをすることから始まる。
必要なことやニーズを把握するために日々部署を尋ねて回って時間をなんとか作ってもらって、ざっくばらんに世間話のようなことをすることから始まる。必要性や彼らの問題意識が把握できないと、まず「顧客」になってもらえないから。
そこから、さらに迷ったのは、自分の仕事の意義を認識してもらうこと。すごいエゴの塊みたいになってしまうけれど、承認と評価を得るためのプロセスである。
なんてったって、テンプレを作るっていうのは、ようは私の毎日はエクセルを広げて入力フォームをカタカタ作ることである。一見したら、秘書業とも思われかねない。
「なんか、あの子エクセル上手ね」じゃちょっとまずいのである。給料以上の価値を出していない、ということだから。
というより、ぶっちゃけ私自身がちゃんと工夫しないと、本当イメージだけでなく、実際秘書だと思っている。
テンプレには組織としてトラックしたい指標や数値を埋め込んで、かつそれを入力していく手間もあれやこれやの関数を使ってできるだけ自動化したり、なんとかその意義が伝わるように工夫するのが私のデスクの毎日だ。
そしてここまでしても多分まだ、「めんどいなぁ、なんか新しい子がきたから報告の手間増えた」って印象は拭えないと思っているので、実際次の四半期レポートをそのテンプレで作って、それを使った分析もして、それを見てもらって初めて後々「なるほどね。まぁよかったかもこれやってもらって」と思われるくらいなのかな、と思っている。(というよりそのくらいの危機感を持たないと秘書じゃない?リスクは常にあると思っている)

だから、こちらにきてから仕事上一番頼りになったのは、民間企業で同じく転職や異動などでバックオフィスを経験してきた友人たちでした。自分がちゃんと正しい方向に歩いているかのか確認するために彼らの金言は本当に良い道標だった。

そして、バックオフィスにいると、社内でのコミュニケーションの重要性がより高まるということもこっちにきてひしひしと感じます。上記の通り、まず御用聞きから初めて、めんどくさがられる作業をお願いするなんてことをするとので、心象は命です。確かに自分もフロントオフィスにいた頃、「経理のあの人は感じがいいし、話がわかるからあの人に相談しよう」とか思っていたし、「社内のために時間割かれるのハイパーめんどくさいけど、xxさんならまぁいっか」なんて勝手なことを考えていました。
前職の私は社内では仕事は仕事と割り切り、社内コミュニケーションはASAHIかよって思うくらいスーパードライだったのですが、今は「感じがよくて、話しやすい子」と思われるのが仕事とその評価に直結します。能面みたいに寡黙に仕事をしていたら、「なんか何考えてるかよくわかんないし、そもそもあの子仕事何してんの」みたいなことになる。
だから、社交スイッチは常にオンだし、社交苦手目 人見知り科の私としてはこれは慣れるまで相当エネルギーを要した。立食パーティーがあるだけで、フルマラソンかよと思うくらいのエネルギーだけを使うのに、それが常に、である。作業的にはエクセルかたかたやってるだけなはずなのに、ものすごい疲弊する、なんて日が最初は多かった。
それでも妥協できないのがこのコミュニケーション。脱アサヒスーパードライな自分。

事業への熱い思いをかけている人たちを前に、彼らの情熱を受け止めて、ツボを探りつつ、一方で完全に利得と有用性ベースで冷静に説得するバランス、
そしてそれを全て包む「感じのよさ」(これが一番とらえどころがなくて難しい)が私のTOR(業務指示書)に書かれるべきじゃないかというくらい大事なのではないかなと思っています。

冷静側から情熱との狭間に
フロントからバックオフィスに転身したよってはなし


登るぞドォーモ

ジュネーブ建国記念の花火大会(8/11)

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