2015年9月13日日曜日

Pippin

シアターオーブ今年のラインナップの中でも、間違いなく来日してることが事件。

予想外の最前列で鑑賞してしまった。息が止まりそうだった。寸分の間も無駄にしないほどに詰め込まれた演出。ピタゴラスイッチで空に上がる打ち上げ花火のように、緻密で大胆で、華やか。一つの花火が空に溶けるのを待たずに、またすぐにそれに覆い被さるかのように舞い上がる。息をつく暇などなかったのだ。





やりすぎと思われるほどに、掛け算なその演出にくどさを感じないのは、一つ一つの挙動はとても丁寧だから。ピタゴラスイッチと呼んだのはそれが故。一つの大きな装置を動かすように、一人一人、一つの一つが正確に、ピースをはめていくように演じる。

歌がシンプルなこともくどさを感じさせない一つの理由。Pippinは全体的に曲調が似た曲が多い。アンサンブルで雰囲気を積み立てていって、そこからソロでグッと引いて、あえてスローダウンしたテンポで怪しげに締める。ニヤリと口角をあげる語り部の余韻にゾワゾワする。

そのコントラストを含めての魅力なので、事前に 音源だけを聴いただけでは全然良さがわからなかった。なんだか似たような曲ばかり、華もあまりない。Pippinは2009年のBest Revival of a Musical部門で最優秀賞をとっている。古い演出の動画をみてみた。かつての演出はもっと、アングラっぽかった。黒子のようなキャストが、舞台に張りめぐらされた蜘蛛の巣を、すばしこく這い回るような。主人公のピピンが内に飼うキャストという設定を大事にした故だろう。

それに対して新演出は正に「魔法の仕立て人」としての作りがとても秀逸だった。だれしも、あんな魔法で日常を彩ってほしい!そう願わせるような、胸踊る細工が圧倒的だった。そして、それを含めての最後の大胆な引き算。魔法の仕立て人がピピンだけのものではないこと、誰のところにだって潜み込んでくれる!そんな期待とわくわくを余韻に残していく。

あえて言うとすれば、主演のピピンの歌唱力がやや不安だった。ピピンはダンスも難易度高くないのでおそらく演技力でとられているのか(演技はたしかにとても良かった)。新演出オリジナル•ピピンの純朴さ、歌唱力の高さがみれなかったのはやや惜しい。それ以外のキャストについては語り部含め大満足。むしろ王、女王、祖母に関してはオリジナルよりよかったかもしれない。

とにもかくにも、間違いなく今年一でした。
圧倒的打ち上げ花火。浴衣で鑑賞にいったのは嬉しい偶然。


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